The Coffee Roaster House

just around five pounds retreat

どうしていま、このとき、この場所なのか③

はっきりとした数字を上げることは難しいし、今の時点で数字にこだわることが意味のあることとは思えませんが、何もないと話ができないので、ひとつ数字をあげてみます。

たとえば、桜カフェとしての開所3月30日から約三週間経った時点でリピーターになって、3回以上豆を買い物いただいた方は3名ほどです。

仮にこのペースでリピーターになっていただいて、月平均二千円ずつ買い物してくださるとして、当初の計画通り、90人に達するのは、3月30日から数えて九十週間後、630日ですから、ほとんど二年近くかかることになります。実際には途中で飽きる方もいるでしょうから、このペースだと、それまでに店は畳まなくてはならなくなるでしょう。

それでも、実際に店の前でいろいろ実演させていただいた感触では、コーヒー豆を挽く匂いだけで感激してくださるかたもがいらっしゃったり、目の前でドリップして見せるだけでよろこんでいただけることもしばしば。そうやって、いったん、店の前で足を止めて、話をすると買っていただける方の割合は結構高くて10%どころではありません。

また地域に新しいコーヒーの店ができたということで試しに買ってみようという方はまだまだいらっしゃるはず。ようするに知られていないだけなのです。

ですから、自分自身がパンクしない程度に、宣伝してゆけば、豆の販売だけで、長い目で見て、この場所を維持するのに必要な売り上げをクリアするのはさほど無理な話ではないと思っています。

でも、最終的にこの地を選んだのには、自分にはそれ以上の勝算がみえてきたからです。そのことについて今回お話しましょう。

 前々から不思議に思っていたのですが、フレーバーコーヒーみたいな、といっては失礼なのですが、小さな焙煎屋であるにも関わらず、まるで大手の百貨店のようなギフトセットを複数用意している店が多いのがどうしてかわからなかったのですが、名古屋遠征の前後でわかってきました。

 今の時代、結構、気のおけない友人や知人でコーヒー好きとわかっている相手に対する贈り物として、第一選択肢はコーヒー豆(もしくは粉)となりつつあるようなのです。そして、そういうときに選ばれる豆というのは、スーパーの豆でないのはもちろんですが、どちらかというとありふれた百貨店のブランドよりは、(時にはスターバックスだったりもするでしょうが、)かなりの確率で、小さな自家焙煎店のものだったりするわけです。

ここでは知名度よりも、新鮮さやユニークさの方が求められるようなのです。他で手軽に手に入らないという意味では、小さな自家焙煎店のものは有利です。ある程度、こだわりのある方は、豆が膨らんだりするとかなんとかいう、そういうところのものでないと喜ばないらしいというのは、なんとなく、徐々に知られてきた、というのが今の世の中なんですねえ。

しかも無視できないのは、こういった贈り物市場の買い手は、本人は、コーヒーに関心がなかったり、極端な話、飲めなかったりするわけです。そこが面白いところだと思います。

はっきりとした根拠のある統計などはありませんが、自分の感覚ではこの種のマーケットはすでに、従来の純喫茶スタイルの店で消費される豆の量を超えているのではないかとさえ思っています。

当初、ドリップバッグ 研究会をなのった理由もここにあります。

なにより、普段、コーヒーにこだわらない方にさえ買っていただけるというのは嬉しいポイントです。つまりコーヒー好きだけに対象を絞らなくていいのです。

何が言いたいかというと、足立ほぼ唯一の自家焙煎店として認知されたとしたら、よほど悪い評判が立つようなことがない限り、とりあえず、近いし、あそこのコーヒーならよさそうだから、贈ってみようか、という感じで選んでいただけると踏んだわけです。

こういう需要があると気がつく前は、この場所を本気に検討するきにはならなかったのですが、名古屋遠征の後では見方がかわりました。

たくさんの人が行き交う、駅前などよりじっくりやるにはむしろ、ふさわしいとおもうようになったのです。

さらに、今、21世紀のアメリカで、そして、すでに日本の都会では、駅前の一等地から、金融関係をはじめとして様々な業種の店舗が撤退し、ネット店舗への傾斜が加速しているといわれます。

自分が思うに、そういう時代だからこそ、社交の場としてのカフェの役割が見直されて、入れ替わりで駅前の一等地に立派なカフェができていってもおかしくないとも思うのですが、いずれにしても、コーヒー豆専門店としてやってゆく前提なら、駅前のような場所にこだわる理由はどんどんなくなりつつあると思うのです。

福岡、北九州はまだそこまでいっていないとしても、将来を見据えた場合、今の場所で力を蓄えてから、そういう場所に満を辞して、本当のカフェらしい2号店を出店するのが、結局近道ではないかとも思っているのです。(その頃になれば地価もやすくなりそうですしね)