The Coffee Roaster House

Cup-on grinded coffee beans of decafe & specialities

珈琲豆の水分量が焙煎にもたらす影響 Part I

まったく同じ産地の同じ農園の同じ畑で、ほぼ同じタイミングで収穫された珈琲チェリーが一方はナチュラルで、もう一方は、ウォッシュㇳで精製されたとします。そして、両方とも最終的に全く同じ水分量になるように調整されて出荷されたとします。

果たして、焙煎者は前者と後者の焙煎に差をつけるべきでしょうか?

たとえば、2つを一緒に窯に入れて、焙煎した上で、特殊な選別機で、それぞれに分けても、別々に焙煎したのと同じ結果が得られるものでしょうか?

水分量は同じ、豆の密度も同じ、そして、粒のサイズも形状も同等とすれば、一緒に

焙煎しようがよさそうにも思えます。

しかし、現実問題としては、先ほどの外観の違い。つまり、シュミレージやシルバースキンの残り具合などの精製方法に由来する違いが少なからずあるはずです。

ということはフレーバーの違いは無視して、カロリーという点でみても、まったく同じではありえないことになります。

しかし今度は逆に、精製方法まで全く同じでたまたま、水分量が3.3%違う豆があったとします。同じように焙煎した場合どうなるでしょうか?

仮に3キロの豆を焙煎したとすれば、約100g分の水を余計に含んでいることになります。そして、その分、実が薄い、つまり実際の豆の成分は少なくなるわけです。

仮にもともとの豆の状態が同じなら、10%の水分量の豆、3キロ(A)、約13.3%の水分量の豆、3.1キロ(B)がおおよそ同じ量のコーヒーの成分を持っていることになります。

こうしてみると、ナチュラルの方が成分だけで見ると、少しだけお得かもしれません。(同じ重さと価格で欠陥豆の数や品質が同じなら)

さて実際の焙煎です。Bは100gつまり、約5.5モルの水を余計に持つため、仮にすべての水が100度の水蒸気として排出されるとしたとき、242KJの熱を余分に必要とします。57.8kcalです。フジの3キロであれば、おおよそ34秒間全開状態で消費するガスの熱量に相当します。実際の焙煎機の効率は50%未満と思われますので、全開で最低でも68秒以上かけないと得られない熱量に相当します。

これは追加で必要な熱量だけの話ですので、どこかである程度の時間の幅を持って、追加のカロリーを与えてあげなくてはなりません。

例えばAで10分で完了するペースで焙煎していて、同じことをBでしようとすれば、(今回の前提条件からすると)焙煎の全ステージで全開の10%以上のカロリーをかけなくてはならないことになります。豆の総重量は3.3%の差ですが、追加で必要なカロリーはそれどころではありません。

はてさて、この焙煎の結果、AとBは同じ焙煎豆になるでしょうか?
答えは、NOです。
なぜか。Bは特に前半部分より多くの水分をもって加熱されるため、温度上昇は緩やかになり、逆に後半乾燥してくるにつれ、温度上昇率は高くなるでしょう。結局、両者は同じプロファイルを描くことはありません。このために、まず、焙煎豆としての結果は異なることが予想されます。また煎り止めのタイミングさえ計算通りにはいかず大きくズレてしまう可能性※があります。例えていえば軽自動車にいつもは1人で乗っているところを(少し大げさですが)4人乗りするようなもので、いくらアクセルを多めに踏み込んでも、いつも通りのペースでは走れません。

ではどうしたらよいか。例えば、可能な限り、焙煎の前半のところで、思いっきり火力を上げて、早く、Aの豆と同じ条件にもっていくとしたらどうでしょう(つまりアクセルを先読みして早めに踏んで追いつこうとするわけです)。この方が後半の焙煎の本番で豆が体験する温度の変遷は一致する可能性が高くなります。ただし、焙煎機の蓄熱性も含めて考慮すると、早めに火力を緩めないと、ブレーキの容量が足らない定員オーバーの車みたいになってしまいます(危険です)。ですから、通常以上の高カロリーバーナーと、少々、アクロバット的な操作が必要となるかもしれません。そして、そこまでしても完全に同じにはならないことは容易に想像できると思います。

ですから、そういうところで言いますと、邪道とする方もいらっしゃいますが、豆がまだ白いうちにいったん止めるようにしさえすれば、ダブル焙煎を行った方が条件をそろえて再現性の高い焙煎につながる可能性があります。

(しかし、こうやって計算してみると、ウォッシュトの豆を大量に焼こうとするとカロリー不足気味に感じる理由がよくわかります。水分の影響力は大といえます)

スペシャリティの焙煎で高火力が求められたり、スタンダードより、過激な操作が要求されるのは、それだけ、水分量だけとってもいろいろな条件の豆に対応するために必要なことなのかもしれません。

 ※加熱するステージによって、豆が吸収する熱量は変動するため