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just around five pounds retreat

珈琲豆の水分量が焙煎にもたらす影響 PartII

それでは、どうしたら水分量10%の豆と13.3%をまったく同じように焙煎することができるでしょうか?

おそらく誰でも思いつくのは、Bの 水分量13.3%の豆の焙煎量を1割もしくはそれ以上減らすことです。たぶん、2,6〜2,8kg程度の間でベストに近い焙煎量が見つかるでしょう。

 しかし、これには重大な問題が生じます。たとえ、1割を超える程度の豆の量の減量であっても、その分、排気の抵抗は減ってしまいますので、ダンパーを開けたり、ファンの風量を増やしたのと同じ効果が生じます。そして、豆温度計の表示もそれなりにブレてしまいます。しかも、後半になるにつれ、焙煎量を減らして、豆の成分が減った分の影響が出てきますから、必ず火力の調整などの操作をしないと同じ焙煎にはならないはずです。

これらは1つ、1つは軽微な違いとはいえ、焙煎の結果においては無視できない範囲の違いをもたらす可能性は大です。その分の帳尻を他で合わせようとすると、これは泥沼。うまくいくとしてもいちいち焙煎機の温度計とにらめっこして、操作する必要が出てくるかもしれません。おそらく失敗の確率は上がります。

 それと、作業の効率や在庫の管理などを考えても、いちいち焙煎量を変えるのはあまり効率の良い方法とはいえません。多くの焙煎者は固定した焙煎量で仕事をされますが、焙煎の量はできれば一番変えたくないファクターの一つといえるでしょう。

 それでは、どうすべきか。おそらくですが、一番、他への影響が少ないのは単純に投入温度を、この場合でいえば20度程度上げてみることでしょう。

こうすれば、十分に予熱した上なら、蓄熱された分は焙煎の前半の一番大切なところで、自然に豆に与えられて、後は、10%の水分量の豆とまったく同じ操作をするだけでいいのです。若干の微調整は必要となるかもしれませんが、投入温度の選択さえ間違っていなければ、それさえ不要にできるでしょう。※

このように検討して見ると、水分量との関連だけで見ても、開始時の投入温度が大切とされていることの意味がわかります。

さて、水分量の調節に関していえば、実はもっと理想的な焙煎方法があります。それは全ての豆を一度水に浸して、乾燥させ、煎りやすい一定の水分量に調整してから焙煎する方法です。これはナチュラルとウォッシュトなどの精製方法によって生じる違いもついでに少なくすることができます。何より水分量についてはブレようがない。ロットが変わろうがいつもと同じ焙煎をしていればいいということになりますから、再現性を重視するなら、もっとも理になかった方法と言えるかもしれません。

 ※ただし、投入温度を調整するこの方法は前半余分にカロリーをかけたことの副作用が考えられます。焙煎機の特性や余熱時の条件によっては必要以上の高温に豆が晒されるからです。例えばフジの3キロの場合、ドラムが空だと、豆温度が200度程度でもドラム表面は300度以上、場合によってはもっと高い温度になる可能性があります。
 そのようなストレスに耐性のある豆とそうでない豆もあるはずで、投入前後の釜の調整やどの程度投入温度を上げるかについてはそれなりの試行錯誤が求められると思われます。