The Coffee Roaster House

just around five pounds retreat

甘みについて Part II

実際の焙煎について考える前に甘みというものについて考えてみることにします。

コーヒーの甘みの正体となる化学物質はほとんどが不明です。

しかし、人間にとって甘みの感覚はそもそもが大切で、生存のためにも最重要なものかもしれません。そこのところから、推理していこうと思います。

さて5つの味のうち、まず塩味は人間にとって必要な電解質を見分け、また過剰に塩分を摂取するのを防ぎます。

苦味はよく言われるように毒や体に負担をかけたり、害を与えるものを検知するもの(アルカリも苦いそうです)。そして酸味は、腐敗のサインを見分けたり、過度の酸性から身を守るものだと思われます。

さらに旨味の成分は主にある種のアミノ酸の成分(あるいはタンパク質)を感じようとしていると思われます。

では、甘みとは何か。いわゆる糖分、あるいは糖質を見分けるものというのが一般的な見方でしょう。確かに脳にとっての栄養は基本的に炭水化物ですし、体の活動には不可欠な要素です。ですから、甘みはある意味、栄養補給が必要な人間の生存にとって一番大切な感覚かもしれません。という風に考えると、ある仮説が生じます。

 それは人間の味覚は未知なるものも含めて、少なくとも自分の体に有益な作用や栄養をもたらすと感じられるものをおしなべて甘いと感じるように作られているのではないかという仮説です。

 というのは、甘みと書いて、うまみと読んだりするように、旨味と甘味はふだんの食生活の中で、さほど明確にわけられるものではないと思うことがあるからです。

 西洋人は最近まで旨味を知らなかったと思っておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、それはただ言葉がなくて、明確には分けられて判別していなかっただけで、誰でも感じることはできていたはずなのです。ただし区別は曖昧だった。

例えば、私たちにしても、脂質に、砂糖や肉とは違った別の種類のうまみ、あまみともつかない、ただのオイル感以上のものを感じることはないでしょうか? 

 今の所、脂質を検知する味覚の味蕾は見つかりそうな兆候さえありません。しかし、人間の脳には、何らかの栄養を体にもたらすものや有用な作用のあるものを感知すると、甘いと感じる働きが備わっているのではないでしょうか。もし、そうだとすると、コーヒーの中に山ほどある様々な成分を味覚、嗅覚、視覚などの感覚を総動員し、全体的に見て、体にとって有効な成分に溢れていると感じられた時、それを甘いと受け止める、そのようなことがありえると考えられるのです。

 だとすれば、良いコーヒーとは第一に甘いコーヒーであるべきかもしれません。

確かに酸味も苦味も目立たず、甘さばかりのコーヒーであったら、それはもはやコーヒーとは言えないという意見もあるかもしれません。しかし、幸いなことにコーヒーは様々な芳香の成分で溢れているので、極端に日にちが経っていない限り、その香味成分も合わせて、コーヒーらしさを主張することでしょう。
それをコーヒーらしくないと感じるのは自由ですが、多くの人にとって、美味しい、価値のあるものと感じられることは間違いなく、むしろ紅茶派も含めて多くの方に支持されるのではないでしょうか。たとえば21世紀に入って話題になったゲシャのように。