珈琲の香りの成分は確か、80年代くらいでも400種類あるといわれていて、今では700くらいに増えているようですが、いつになったら解明しつくされるか誰にもわからないので、化学的な成分がどうのこうのということは原則無視して話をすすめます。
人間はどうやって様々なかおりの成分を判別しているのでしょうか?
そのことを考えるのに、まず言葉の面から考えてみたいと思います。
さて香りを意味する言葉にはいろいろなバリュエーションがあります。
日本語なら、匂い、臭い(またはくさい)、芳香、香り、
とても分かりやすい区分けですね。
快感をもたらす、あるいはおいしい食べ物を連想させるにおいを意味する匂い。
いっぱんに不快感につながりやすい臭い。
かぐわしいにおいを意味する芳香。
そして、風に乗って漂ってくる花のかおりのように、空間にただよう
このましい成分を表すかおり
英語なら、フレーバー、アロマ、フレグランス、odor, smell などです。
フレーバーは、味と香りの総体としての、〇〇風味、〇〇味という意味でつかわれることが多く、純粋ににおいを表すことはめったにないとは思いますが、人間の感覚は嗅覚に引きずられる部分が大きいこともありますし、日本語の〇〇味以上に嗅覚に偏った表現に感じます。
aroma fleglanceは語源が違うだけで両者とも芳香、香気という感じで似たような場面でつかわれます。smellはもっと単純に香りまたはにおいという意味で、aroma やfleglanceの意味も含んでいます。英語圏ではある程度の格式のある文書は1つの段落の中で同じ名詞を繰り返さないという不文律みたいなものがあるので、これらは同じ内容を表すのに、繰り返しを防ぐために交互に使われることがよくあります。別の言葉として扱って訳して日本語にしようとすると、わかりにくくなるところです。
odorは日本語のくさいまたは悪臭にちかい意味でつかわることもあるものの、臭いをどうとらえるかは主観的な部分が多いので、ときおり、smellと重なる意味合いでつかわれることがあります。smellとodorの境界はあいまいで時には重なります。例えば、smell fishyというと、うさんくさい、という意味になったりします。魚臭さは新鮮な魚に触れる機会が少なかった、アメリカ人にとっては、完全に悪臭とは言えないけれど、好ましいともいえない、何ともいえない怪しいにおいといったニュアンスがあります。(魚嫌いにとっては明白な悪臭です)
この中でかおりはほぼ空気中を漂う花のような香気成分を表していると考えられます。つまり鼻先だけで感じるにおいです。(日本語 特に大和言葉は面白いですね。花と鼻がアクセントは違っても同じ音なのは偶然ではないでしょう)
一方フレーバーは鼻だけでなく、口の中で感じる香気成分も含めた表現と思われます。
それが舌で感じているのか、ひょっとしたら歯茎で感じているのか、鼻に回っているからなのかはこの際、問わないことにして、口腔内で感じられるにおいと味の総体です。
また芳香やフレグランス、アロマは香水などの特別な香りを表している、例えていえば、エッセンシャルオイル(精油)のような成分から発する香りでしょう。
いわゆる芳香族(aromatic)といわれる物質が織りなす香り(揮発性の高い成分)がこれにあたると思われます。
ということは少なくとも、人は
1 鼻先だけで感じられる。空間を漂うような自然なにおい、またはかおり
2 口腔内で生じたり、感じられるかおり
3 芳香族による特徴的な香り
4 危険や不快感を連想させるにおい
をある程度、別々のものとして、認識していることになります。