Coffee Beans Kurochamame

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コーヒーにおける芳香物質の生成

実は、実際の物質名についてなるべく触れずに、コーヒーの芳香成分とその働きや、焙煎について語れるところまで語ろうと粘ってみましたが、そろそろ限界です。

というのは、香りの物質を3つに分けた程度で言えることは限られていまして、ごく当たり前の結論しか導けません。

たとえば、炭酸ガスに溶けやすい揮発性の成分をより多く残そうとするには、なるべくなら、必要以上の高温、高めにみても直接触れる熱風がおおよそ250〜260度以上の温度でないこと。(これは例えばローリングでいうインレット(吸気温度)とは違います。ドラム内で豆から発する冷気または水蒸気と混合された後の温度です。インレットに近い条件で測定するなら、ここでいう、250度は、300度以上の吸気温度に相当します。またドラムの内面はもう少し高温、フジの場合は一部で350度前後にまで熱されている可能性さえあります。基本的には好ましくないものの、部分的だったり、ごく短時間であれば、このように300度を超える温度にさらされても、極端な不具合は生じないはずです。)

そして、豆そのものはさらに低めの温度におさまる必要があると思われます。具体的にはどれくらいかというのは言いにくいですが、185度で一ハゼが訪れる焙煎機の豆温度計で測って、おおよそ200度を大きく超えない範囲です。ですから、いわゆる投入温度を通常200度を上限として、徐々に下げてゆくといったスタイルが一般的なのも、一定以上の品質の豆をホット用に焙煎する際は、深くても二ハゼの手前のハイ程度までで止めるといったやり方をスタンダードな焙煎として貫かれておられる方が比較的多いのもうなづけます。

どうしてもそれ以上深く煎りたい場合、なんとか工夫して、豆の全体が200度以上の高温に長時間晒されないようにする必要があります。

実際焙煎していると、あるところから、魂が抜けるように、コーヒーの成分がごそっと抜けたと感じるポイントがあります。

特に浅煎りに向いたスペシャルティ向けの焙煎のコースに乗っているときは、一ハゼのスタートから1分経ったら、気が抜けません。甘酸っぱいフレーバーがマックスに感じられて、このままだと少しアンダーで九州人にはうけないかなあと、迷っていると、10秒もしないうちに、何もかもなくなった感じがして、しまったと思うわけです。

中には、一ハゼの前後は全開でおもいっきりハゼさせるようにしていると言われる方もいらっしゃいますが、ハゼの前の焙煎の途中で大きく火力を落として、緩急をつける場合はいいとしても、そうでない場合、焙煎中はいい香りはしても、肝心の豆には香りが思ったほど残っていない可能性があります。(このあたりは特に半熱風の場合、蓄熱の影響があるので、先読みが必要です。)

新しく焙煎で生成される成分はある程度水分が抜けた後で、発生するであろう」ことを思えば、一ハゼを迎えた豆にもしっかりカロリーをかけた方が良さそうですが、やりすぎると、実際には多くの成分が盛大に発散して空気中に消えてしまいかねません。

油に溶けやすい芳香成分がどのように生成し、コーヒーの中に定着するかについてですが、これも個別の物質について検討が必要となりそうなので、おおまかなことしかいえません。

ただ油ということでいえば、ラー油のような香りが焙煎の最中や、焙煎直後に強くしてしまったら、明らかに熱の加えすぎで、焙煎後半の火力が過剰です。温度で言えば、300度近く、もしくはそれ以上の温度に豆の表面が晒されている可能性があります。(ドラム内の比較的高温になる部分の空気の温度は一般の豆温度の表示から、20度から60度程度高い温度に保たれるために、このような温度に晒されることなるのです。)

ベースとなる油がそれだけ加熱されていれば、それなりに香ばしい香りはしても、本来の自然なフレーバーはほぼ失われています。(ただし、いい豆であれば長めの期間を置くと、夫びっくりということもしばしばあるものです)

また、深煎りで黒い煙がもくもくと上がるような条件は、乾留によるフレーバーは生じるために、別の魅力につながっている場合もあるかとは思いますが、これもたとえば、炙り鮨のように、豆のごく一部だけがそのような高温になるような条件にもちこまないと、やはり美味しいコーヒーとは言えないはずです。そういう意味では深煎りになればなるほど、ある程度意図的なムラが必須で、直火が有利ということが言えると思います。また、赤外線発生装置をわざわざ装着するケースが特に深煎りの場合多いのも、この辺りが関係しているかもしれません。

もうひとついえることは、やはり焙煎の最後まである程度の水分は残すべき。いや、残るべきでしょう。フリーズドライのインスタントでさえ、開けたての淹れたてはちゃんとそれなりに一般的にコーヒーらしいと認知される香りがしますから、水分に触れれば、それなりの成分が再び溶け出すのですけれど、水分が残ることで豆の内部が必要以上の高温に晒されずにすむうえに、水よりも沸点が低いか、揮発しやすいと思われる芳香成分が保持されるにはある程度の水分が残った方が有利と考えられるからです。

日持ちを気にする場合、保管条件や保存方法でクリアすることにして、可能な限り、水分を残して焙煎した方が、本来の豆の持ち味は出しやすいはずです。スペシャリティで浅めの焙煎が好まれるのはごく自然なことといえます。