The Coffee Roaster House

just around five pounds retreat

それからの延長戦 ③

そんげんこた、わからん、は目に見えないものを一切信じようとしなかった父らしい言葉ですが、この後に及んでも、精神的な実体としての人間の本性、いわゆる魂のようなものについて、ほとんど自覚がないということでもありました。

こうやって、言葉も出せないのに、私と会話できていること自体が、父にとっては一つの証明と言えるのではないかと思うのですが。

父の方から、お前は俺を助けちくれるんじゃねかったんな?という気分が押し寄せてくるようでした。

そこで。

なあ、父さん、父さんはまだ最低一ヶ月は生きる力はあると思うし、俺はもう少し生きていてもいいとおもちょるけんど、本当のことは神様にしかわからん。病院に帰ってもその日に亡くなったりしないとも限らん。

だから、神様に頼んじ、母さんや弟やらの夢に出演させてもらって、訴えてみたらどうな。本当にそれが天命じゃったら、必ず、神様は応えてくるるじゃろうから。

神様にきいてみらんな。

無心論者だった父がどういう反応を示すか、わかりませんでしたが、そう言い終えると、父は珍しく黙って少し考え込んでいるような様子でした。

自分の理解できないことや意に染まないことがあるとすぐに反発していた父らしくなかったのですが、それはここ10年ほどの間に静かに父の内面で密やかに起きていた変化だったのかもしれません。