The Coffee Roaster House

just around five pounds retreat

最期の晩酌 ①

午後になると休憩に入っていた弟夫婦が買い物袋を抱えて帰ってきました。父に考えられるだけ、ここ数年、特養に入っていた時間に食べられなかったものを食べさせるつもりのようです。

その中には焼酎やら、刺身やら、もう、看護という立場なら絶対に口にさせてはならないものがたくさんありました。

ただ、看取るという視点であればありえるかもしれない。

とはいえ、そういうものを今の父に与えてしまうと、よくても却って無用な苦しみの原因になることは明白だったので、止めるべきか迷いました。(というかそもそも命が危ない)

とはいえ、弟からすれば、父の最期のためにと思ってやっていることですし、安易に止めたところでどうなるものでもなく、自分の見ていないところで与えられたら、同じことです。理屈で説得してなんとかなるものでしたら、そもそも、今回のようなことにはならなかったので。

ただ、今の父なら、ひょっとして、弟にもわかるように、拒否のサインを出せるのではないかとも思ったのでした。

弟が父に焼酎の入った杯を向けた時、

もし父がこちらを向くなり、たすけちくりい、という雰囲気を出すなりしたら、声をかけようかと思っていました。

しかし弟が父の口元に焼酎のお湯割りを持って行こうとした時、父は最初に本当に嫌そうな顔をしていましたが、再度、促されると、〇〇が父を思ってしてくれていることなら、仕方ない、といった風で焼酎を受け入れました。

その様子を見て、後ろ髪を引かれながらも、午後は父を弟夫婦に任せることにしました。