夜中近くになっても父の激しい息づかいは止まらず、その間、弟は弟なりに、色々考えて、父が好みそうな音楽や神楽の調べを流したりしながら、父を見守っていましたが、やがて母と私にバトンタッチする時がきました。
まず、カラカラになった喉をどう潤すかです。
脱脂綿で口元を湿していたそれまでと違って、小さなスプーンに白湯や薄めたコーヒーを入れて、父がたくさん含めるだけ与えるようにします。
すると、喉のかなり奥の方まで入っていって、やがて、詰まったいろいろなものを溶かして、戻してくれました。
それまで食べたいろいろなものが戻ってきました。固形物はもちろん、最後の最後、大きな硬めの緑色の何かがのどの奥から飛び出てきた瞬間、それまでまったく出てこなかった痰やつばがふたたび口の中に貯まるようになって、手製の吸入器で吸い出してやると、なんと、父の呼吸は再び楽になって穏やかになってきました。
そして、2日目の午前のような落ち着きを取り戻していったのでした。