The Coffee Roaster House

just around five pounds retreat

通夜という風習 ①

よほど手慣れているのか化粧を施された父の顔はまるで人形館のろう人形のように本当にすっきりとした端正な面持ちで輝いて見えます。と同時にいますぐにでも起き上がってきそうな気がするくらいのみずみずしい表情にも感じられます。

急遽、葬儀屋にきてもらって、本日中に通夜を行うことが決まりました。するとほどなくして、ドライアイスのボックスが運び込まれ、父の掛け布団の下におかれました。

寒くないかなーと思ったのですが、当たり前ですが、父の表情は変わらずでした。このみずみずしい状態をできれば葬儀の時まで保っていてほしいと思っていたので、ホッとしましたが、同時にある心配が頭にもたげてきました。

ときおり広い世界では臨終の後、蘇生する事例が報告されています。本来なら、そのまま放置しておけば蘇生したかもしれないのに、このドライアイスの処置のために帰ってこれなくなるといったこともあるのではないかという懸念です。

もともとの父の場合は、そんなことも気にせず、ドライアイスを跳ね飛ばしてでも起き上がってきそうな人だったのですが、事故があってからさすがによわっていましたし、最近数年間は寝たきり状態でしたので、気になってしまいました。というのは以前お話しした父の夢のことがまだまだ念頭にあったからです。

夕刻の通夜はコロナの影響と告知が急だったこともあり、ごく簡素なスタイルで執り行われました。

最後に親戚一同が集まった席で挨拶を求められたので、家族を代表して、ひとこと。今朝の父の最期について簡単にお伝えしようにも、たぶん、多くの方の理解の範囲を超えていると思われたのと、短時間で終えるように、念を押されていたので、父は最後には母の献身に感謝する気持ちで旅立ったということをお伝えして終わりました。

多分正味45秒くらいだったと思います。それと、

なぜかその夜は、思ったより早く寝入ることができてしまいました。