Coffee Beans Kurochamame

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ニュートラルの概念

ニュートラルというと昭和世代の日本人なら、MT 、マニュアルトランスミッションの車のニュートラルを連想するかもしれません。

意味合いとしてはクラッチを入れても、前進も後進もしない。動力が伝導されないポジションです。

では焙煎機でニュートラルがありえるとすれば、どのような概念なのでしょうか?

焙煎が前にも後ろにも進まないポジションっでしょうか?

それとも豆温度が上昇も下降もしないポジションなのでしょうか?

一般的には、たとえば投入口に手をかざして、熱風を感じるところと冷たい感覚がするその中間のところ、といった説明のされかたをしていると思いますが、実際はそんなに簡単ではありません。

排気については直火と半熱風でも切り替えて考えないといけないと思いますが、多くの場合、書籍などに記載されているないように沿って、慣れない方が操作した場合、ニュートラルと感じる位置では必要以上に引きすぎている可能性があります。

ある程度予熱も完了していて、もともと排気をギリギリまで絞っている段階からダンパーを開けた場合は、焙煎機に溜まった熱い空気がどっと流れてきて、少ししてから冷たくなるのですが、あれまだまだかと思って慌ててさらに開けると大きく開けすぎてしまうかもしれません。

ところでもし、このとき焙煎開始しようとしているなら、火力は絞っているはずです。

そこからダンパーを閉方向へ戻すとまた少しだけ温かく感じる、かもしれません。そしてそこから、もう一度開くと、今度はすこしだけ冷たく感じたとしても。その間でもゆらゆら揺らぐように手先に感じる温度は変動したりします。そして、しばらく経って今度は十分に余剰な熱風が抜けた後だと、ダンパーを開けても閉じても先ほどと比べてほとんど変化を感じなかったりします。 火力が低いとニュートラルの位置はそれだけ曖昧になるのです。だだし、この最初の状態で感じる熱さはとても熱いかもしれません。排気を絞った焙煎機のドラムの外に溜まった熱風の温度は300度以上、時には500度近くまで達することさえもあるからです。

逆にまだ予熱もそこそこで、排気が強い状態が続いているところからダンパーを閉めても、熱風が貯まるまでそれほど熱い風を感じません。

そして、もしその時にある程度の量を焙煎するつもりであればある程度の火力を発生させているでしょう。

そこから、ダンパーを開けると、火力が強いので思ったほどは冷たく感じないかもしれません。排気が強いと出てくる熱風の温度は流れる熱風の量が増えるのでそこまででもないものの、火力が強ければそれなりには熱い風が大目に出ているように感じる。そこではっきり冷たく感じる手前までダンパーを開けてしまうと、もともと排気が強いところをまたまた開け過ぎてしまったりします。

そうすると、火力が間に合わなくなってさらに火力を上げてと、いたちごっこになりかねない。

投入口の断面積は配管よりも狭いのですが、ダンパーを5段以下に絞った段階に比べれば十分に広いのです。さらに、投入口から空気を取り入れている状態は上に上がろうとする熱風を重力に逆らうようにして引き込みさらに空気を吸い込んでいる状態なのです。

ということははっきり冷たく感じる時点では本来のニュートラルと呼ぶべきポジション(がもしあるすれば)1.4倍もしくはそれ以上程度の排気を発生させている可能性が高いのです。

そもそも投入口を開けたままで排気を判断するのは、ホースに穴が空いた掃除機で吸い込みがいまいちといっているようなものです。

そこから投入口をしめて焙煎を始めてしまうと、それだけでも必要以上の空気の流れを呼んでしまう可能性があるのは直感的にも理解できるのではないでしょうか。

もし焙煎に適切な排気を確かめようとしているなら、絞った時点から、すこしだけ生暖かい空気がゆらゆら立ち上がって、ときどき、冷たく感じたり、暖かく感じるようなポジションの前後のどこかをニュートラルとすべきでしょう。なぜなら、この状態ですでに、バーナーで発生している熱風以上の冷たい空気をバーナー側の隙間からかなりの割合で吸い込んでいるからです。そこから投入口を締めるとさらに吸い込むわけですから、この時点で焙煎に最低限必要な相応の引く力は発生しています。

この状態である程度の量の豆を投入して焙煎を始めると、程よいところで(ニュートラルと呼ぶのが適切かどうか異論はあるかと思いますが、ある意味で)バランスが取れた状態になるかと思います。

ニュートラルの確認方法は、その時の火力や予熱開始からの時間など、自分なりにルールを決めておき、まずは豆が入っていない段階で確認しておいて、バッチ量や焙煎スタイルによって、もし必要と感じたら、さらに微調整すべきなのです。

感覚だけで排気を判断するには、熱風の温度や量の変化と同時に現在発生している火力の影響を加味して、立体的に考えなくてはなりません。

ここに、厄介なことに、釜の温まり具合というもう一つの要素が微妙に絡んできます。四次元的とまでいったら言い過ぎかもしれませんが、相当に多面的に捉えなくてはなりません。

かなり職人芸的感性が求められることは容易に想像できるとおもいます。

実際には指導される方によってニュートラルと呼んでいるポジションはかなり違いがあるように思いますが。