The Coffee Roaster House

just around five pounds retreat

DRY ENDとは

aritisanにはドライエンド(乾燥終了)という概念が導入されています。160度超えた頃には豆が色づき始め、それから、しばらくすると、RORがそれまでと違ったペースで上昇し始めたりもします(火力が有り余っている方の場合など特に)。

果たして、この乾燥終了という概念は正しいのでしょうか。

日本で古くから焙煎しているかたの場合ですと、しっかり水抜きをするとおっしゃられて、1ハゼの前後の水分が豆から出てゆく姿を見せてくれる人がいたりします。

その方にとってはしっかりハゼさせることが水抜きするということらしかったのです。

現実には水分のかなりの量は1ハゼの前から加速度的に抜けてきて、ハゼの前後で相当量が放出されるようですので、160度前後でDRYENDと呼ぶのは少なくとも表現としてはあまり正確ではありません。その点では昭和の日本の自家焙煎店の感覚の方が正しいといえるかもしれません。

例えば、火力の掛け方によって、ドライエンドとかイエローとかゴールデンと呼ばれるタイミングから1ハゼの間のどこかで、わずかに温度上昇率が上がってくることがあるのは、一般的に言われているように、水分が十分に抜けたからではないとくろちゃまめは捉えています。

いわゆる、ゴールデン、イエローといった状態。確かに色づいて乾燥しているようにも見えるかもしれませんが、それは表面に近い部分だけのこと。豆温度センサ(熱電対)に触れる表面に近いところで徐々に化学反応が起きやすい条件が整ってきていることを示しています。それらの反応は全てではなくてもおしなべて発熱反応なのでしょう。このとき、豆全体で見るとむしろ乾燥はようやく中盤に差し掛かったばかりといってもいいくらいです。

それでも表面近くで乾燥が進んでコーヒーの中で化学反応が進行しやすい条件が整ってくるから、しっかり色がつく。温度上昇率もわずかに上がる(かもしれない)。これは自然な成り行きです。(これを後から抑えようとするのはそれ自体には意味がない。前半の火力を抑えたほうがよかった可能性はあります。)

そして、そこからしばらくして、豆のセンターカットの裏側の空隙に充分にカロリーが伝わって、液体の水が1800倍近くに膨らんで水蒸気になるために必要なエネルギー+αが蓄えられた豆から、1つずつ順番に1ハゼが起こります。そのとき、急激に発散される水蒸気の気化熱によって、RORは放っておくと、急下降してしまいます(ハゼさせる最小限のカロリーしか受け取っていない場合特に)。

通常はそのまま腰折れ(クランチ)してしまうのを避けるために、少し先読みして、事前に火力を上げるなどして対応することになります。もしくは、それまでの経緯で十分な火力が伝わっていると思われる状況でも1ハゼの開始前後は火力を落とすという選択肢はまずないでしょう。(プロバットなど蓄熱性が高いとされる焙煎機の場合は、また別の話になるかと思います)

ただ、あまりに1ハゼが激しすぎるとそのままの勢いで破綻してしまうケースもあります。そのときは、1ハゼが始まってからの様子を見てから、若干火力を調節するというケースはあると思われます。その場合も、あまり急に絞ってしまうと、せっかくの1ハゼのタイミングを外してしまいますので要注意です。

1ハゼは必須とまでは言い切れませんが、自然にハゼさせる力がない状態のまま焙煎を進行させても、例えて言えば、ブレーキをかけたままゆっくりアクセルを踏んで無理やり走っているような不自然な状態が長く続くだけで、良いことは一つもありません。車なら無駄にブレーキを摩耗するように、豆の中の有効成分を無駄に消費する結果に終わったり、未反応のプロセスが残って不完全感のある焙煎になるでしょう。

1ハゼ開始以降にしか反応が進みにくい部分が豆の内部に存在するからです。特に浅煎りを短時間であげようとすればするほど、1ハゼが進行している最中に素早く反応を進ませるために、火力は緩めるわけにはいかないのです。

いずれにせよ、ドライエンドと呼ばれるポイント、もしくはイエローとかゴールデンと呼ばれるポイントが焙煎中の重要なポイントの一つを表す表現であることに異論はありません。