Coffee Beans Kurochamame

for Dripbags, Coffeemakers and hand-brewing

焙煎中の排気操作

しっかりとした考え方で設計された焙煎機が適正に設置してあれば本来、排気はほとんどの場合、固定であるべきで、修正する必要はないはずです。ある意味、焙煎機の性能の前提条件すなわち、温度センサの数値やバーナーの燃焼の土台を支える基本的な物理条件であり、そこに無用な変化が生じるのは好ましくないはずだからです。

そして、業務用の道具を設計するとすれば、無用な操作は最小限にするのがむしろ当然です。

焙煎が適切に行われる条件はそんなに広くないのです。焙煎のステージのごく最初の十数秒ないし、数十秒を除外すれば、豆が触れる熱風の温度は、せいぜい215±15度程の範囲に収まっはなければなりません。測定方法や焙煎スタイルによって生じる誤差や焙煎機の構造による差異を考慮して広めに見たとしても、160〜250度※程度の範囲に収まっていなければならないのです。

もちろん、ごく短時間であればこの範囲を離れても問題はありません。極力この範囲を外れないようにドラム内の豆が触れる部分の温度にムラが起きないようにしなくてはならないのです。

それでもあえて排気を修正するとするなら、火力とのバランスが変化したことによって生じる、熱風の温度変化は極力抑えなくてはなりません。その点で見れば焙煎量よりもどちらかというと、火力に応じて操作するという考え方を基本としなくてはならないのです。

その他の理由で操作する場合も、原則、熱風やドラムの温度の変動をキャンセルする方向に操作しなくてはなりません。

豆の量以上に直接絡む関係が排気と火力のバランスや熱風や窯の内部の温度との間に成立しているのです。そして、その関連性は焙煎機の基本的な特性そのものでもあります。(排気の量とは直接関係しないものの、焙煎の進行に伴う豆温度の上昇に合わせて、熱風の温度を緩やかに上昇させることができれば、さらに理想的です。これはまめに伝わるカロリーに無用な変動が生じないという意味で大切な条件のひとつとなりえます。)

そして、特に深煎りの世界に入り込んだ場合など、この考え方を少し拡張する必要が出てきます。より正確に言えば、火力、でなくて、窯の中で発生している熱量に呼応した排気ないし、空気の流れを確保する必要があるということです。

少し、焙煎の進行に応じて考えてみようと思います。

たとえ焙煎量が倍に増えても、焙煎の開始時点で倍のカロリーを発生させる必要などはありません。例えば焙煎時間が伸びるのを許容すれば少し投入温度を上げるだけでも事足りるかもしれません。(まったく同じ焙煎はできないわけですが、そもそも焙煎量が倍以上になっても、少量の場合と近い焙煎をしたいなら、焙煎機そのものをより大型のものにすることを先に検討すべきです)

この時、排気を豆の量に応じて上げる必要が本当にあるかというと疑問です。

最初の数分間の温度上昇はかなりの割合で蓄熱の力によるものです。排気を上げるというのはせっかく蓄えられた熱をそっくりそのまま排出してしまうという結果になりかねません。

この場合、もし排気を少し上げるとしても、気持ち程度にしておいた方が無難とは思いませんか?

豆の冷気でドラムの内部が冷やされているわけですから、バーナーを消している場合排気しても、真っ先に排出されるのは相対的に軽い釜の中の暖かい空気で、豆から出た重たい冷気はドラム内に残るでしょう。そういう意味ではむしろ排気は閉じて熱気を閉じ込めた方がいいかもしれないくらいです。バーナーをつけている場合も、その生じた熱気がドラムに入り込むのに必要な最小限の範囲で排気をコントロールすべきなのです。ですから焙煎量が増えても、かえって排気を絞るという選択肢があり得るのです。(どんどん大量の熱風を押し込むように送り込むことのできる熱風式とは真逆の発想が必要かもしれないということです)

おそらく焙煎の前半に通称蒸らしと呼ばれる工程を設けようとされるのは、このような考え方をさらに発展させたものでしょうが、実際には蒸らしているわけではないはずです。(このことは後述したいと思います)

次によくされるのは1ハゼの前後で水蒸気を抜く目的でダンパーを開くという行為です。

これ、意味がないとまでは思いませんが、少なくとも蒸気を抜くためというのは逆の表現であるといわなくてはなりません。確かに1はぜ前後は水蒸気の圧力で窯の内部は陽圧方向に振れます。そのために、もともと排気がギリギリならば、バーナーで発生した熱風がドラムの中に入り込めなくなってしまうはずです。これはまずい。ということで早めに空気の流れを確保する目的で、空気を通すために、排気を上げる、確かにこれは重要です。

でも、ここで思いっきり排気を上げるとそれだけ水分が抜けるかというとそんなことはありません。乾燥逆転温度というものがあり、おおよそ140度を超えるくらいから湿度は100%に達すると豆の内部は乾燥しやすくなるのです。ヘルシオと同じ原理(過熱水蒸気の作用)です。ですから、過度に排気を強めるのは逆効果になる可能性があります。それとタイミングを間違えると熱風の温度が急上昇して、ハゼが暴発したかと思ったら、しばらくして(本来ならもう少しハゼさせたいところなのに)落ち着いてしまったりといったことになりかねない。

次に2ハゼ開始後について考えてみましょう。2ハゼで排気を上げないと煙臭くなるから、排気を上げるといわれる方がいらっしゃいます。そんなことはないと思います。

事前に充分に火力を絞っていれば、排気を上げなくて済む場合の方が多いかもしれません。

この時、どのようなやり方で、どの程度排気をコントロールすべきかといえば、豆の発生するカロリーと燃焼室から流入してくるカロリーおよび窯の蓄熱の3つの総和に応じた排気を確保する。すなわち空気の流れを作るということです。

特に2ハゼ後半まで持っていきたい場合、火力の調整で間に合わないと思えば、焙煎量に応じた積極的な排気の調整が確かに必要になるでしょう。

この点だけは、しっかり豆の量に応じた対応が必要になるのは間違いありません。

でも、豆の量に比例するような操作が仮に必要となるとすれば、主に2ハゼ開始以降がメインでしょう。あと、あえて言えば、元々排気を絞り気味で行った場合、1ハゼの前後です。

どちらも、水蒸気を逃がしたり、煙を逃がすためでなく、バーナーで発生した熱量がしっかり流入するのを助けたり、特に2はぜの発熱反応によって生じる窯の中の余剰なカロリーを調整するのが主たる目的と捉えなくてはなりません。これはアロマの調整以前の問題なのです。

特に深煎りの場合、バーナーの調整だけで間に合わない場合は、2ハゼの後半では流入する空気で積極的に豆を冷やすという考え方が必要かもしれません。

なぜなら、2ハゼの最中に豆の中は250度を超えるすべてを焼き尽くす高温に達する可能性があるからです。他を犠牲にしても、なんとかこれだけは避けたいとところです。

と簡単に書いてしまいましたが、これは実はかなりの綱渡りです。もともと絞り気味であったら、いきなりダンパーを開けると却って高温の熱風がドラムに流入して2ハゼは暴発してしまいます。かと言って締めるのは豆の内部の熱を篭らせてしまいますし、この内部が高温になった状態のまま酸欠状態に置くと好ましくない。結局先読みして、早めに事前に排気を上げつつ、火力も絞っておかないとうまく行かないかもしれません。

ただし、この豆の内部の温度を上手にコントロールできた場合、本当の深煎りらしいフレーバーなり、アロマが得られるでしょう。

そして、深煎りを追求するなら、やはり、後半のどこかのタイミングで排気が絞れるだけ絞った方が好ましい結果が得られる可能性があります。

※この吸入温度は熱風式など、ドラムに流入する熱風の温度をドラム内の冷気にまったく影響されない状態で測ることのできるタイプの焙煎機の場合はプラス50度程度、最高280度から300度近い温度で表示されるでしょう。しかし、この場合も実際に豆が体験している温度というものが測れるとすれば、もう少し低いのではないかと思っております。なぜなら、正常に焙煎が進んでいる条件では隣り合う豆の発散する冷気ないし、水蒸気でお互いが冷やされ続けているからです。