自然界に生じるランダムなバラツキに関する法則がコーヒーにも当てはまるのではないかと思っているものですが、それは実は焙煎にも大いに関係しているのではないかと思っています。
と言いますのは、いわゆる昭和のスタンダードな焙煎だと、15分とか18分とか。
時にはそんなに焙煎度は深くなくてもそれ以上かけるとか。実際、自分の釜の場合、26分かけてシティまで持って行ったものがどうやってもベストという豆が存在したり。
いろいろありますけれど、逆にスペシャルティだと10分以内の焙煎が望ましいという話になったりします。
ちなみに同じ焙煎度で10分と12分でも大きな違いです。いや、そもそも同じ豆で10秒違っても全く別物。
いや、まったく同じ焙煎時間だったら同じというわけでは、そもそもありません。
それでも同じ人が同じ焙煎機で同じスタイル(あるいは同じ考え方で)焙煎する場合でも、10分で終えられるところを、12分、13分かけるというのはなぜなのか。
料理をするときのことを考えてみてください。たとえば大豆の産地が変わって茹でる時間が5割増えるとか、そんなことがあるでしょうか? 粒の大きさや固さに応じてやり方を加減することはあっても、多少鍋のサイズが変わったり、火力の具合が変わったとしても調理方法が変わらなければ、せいぜい2割、3割程度の調整で済む場合が大半でしょう。
いくら豆に違いがあるといっても、10分が、15分になるというのはあまりに極端です。
それが場合によっては同じ焙煎機で10分が20分になることもある。
どうしてこんなことが行われているのか、焙煎を始めたところは全くわかっていませんでした。
今なら、ほとんど即答できます。それは豆の水分量や密度のばらつきの影響が大半であろうと。
ごくざっくりと言いますと、市場の評価でスタンダードの5倍、10倍となるような高級な豆は流石に揃っている。自然界ではありえないほど、不自然に揃っている。
ですから、その豆に自然なバラツキ、ムラを与えなくてはならない。だから、極力、強めの火力で短時間で仕上げて、ランダムで自然なばらつきを後付けで与える必要がある。
そこまで揃っていないどころか、あまりにばらつきがひどくてハンドピックしてもカバーできない豆は、思い切って18分なり、20分でもかけて、ばらつきを揃えた方が全体としてまとまりが良くなる。
そして、もともとほどよいバラツキに収まっているものは、レンジが比較的広く、自由にいれるものの、そして焙煎度にもよるものの、おおよそ時間で言えば、10〜15分程度で十分。
そういうことではないかと思っているのです。