The Coffee Roaster House

just around five pounds retreat

ガウスの世界への扉 ⑥  1ハゼと2ハゼの狭間

WBがどうしても追いつけませんが円形の落射照明で撮影


(こちらはダブルのスポットで撮影)写真の説明。センターカットの上の部分に生じている裂け目はハゼの後に発生したと思われる裂け目です。豆の下側の左の豆のお尻の部分にも、この写真ではわかりずらいですが、ジェットの噴出口のようなものができています。

豆ひとつとってみても、1はぜと2ハゼははっきり区別ができます。すべての豆が爆ぜるわけではないものの、1ハゼでははっきり大きな音を発することが多いのに、2ハゼではちいさくぴちぴちと爆ぜていきます。また時間をかけさえすれば、1ハゼとちがって、2ハゼはほぼすべての豆で起こっているようにもみえます。実際には数えるのも難しいし。ひとつの豆が2はぜの最中に2回、3回と爆ぜているケースもないとは言い切れないのですけれど。

1ハゼではパンやケーキの焼き上がりにも相当する好ましい香りがその前から漂って、ハゼの最中しているのに、2はぜは始まる前から微かに煙のようなものを感じたり、少し油が加熱された状態を連想するような香りがただよったりします。この段階で豆の内部はかなりの高温になっていることが想像できますし、焙煎後に豆の外側にはっきり油が滲んでくることも多いことから、2ハゼになって油がでてきたと言われることもあります。

もちろん、実際には油脂分が変化することはあっても、もともと生豆の状態であった油が壊れた細胞壁を通して滲み出てきただけで、新しく生じたわけではないのですが、豆の状態でも滲むくらいですから、粉にするとなおさら表面に出てきやすくなって目立つわけです。

逆に浅煎りの場合、そもそも水と油というくらいですから、お湯を注いだくらいでは粒の内側の油が出てくるのは難しい。そのために、主に粉砕した表面に面した分の油が僅かに抽出されるだけになる傾向にあるのです。

さて、今回のミクロイドの調査結果をあらためて精査したところ、欠陥が見つかりました。どうも、サンプリングの方法に問題があった可能性があり、今回の調査の結果は再度検証の必要がありそうです。

と言いますのは、細胞の中でもさまざまな物質は偏在しており、偏りなく収集するのは難しい。特に1はぜをピークを迎える前では、そもそも細胞内部の偏在の影響が大きいようです。

しかし、わかったこともあります。1ハゼは主に水蒸気による爆発、これは間違いないでしょう。水の分子は小さいものの、水素結合の影響が強く、お互いにくっつき合い、ひっつきあってなかなか蒸気になれません。その蒸気の圧力が20気圧にも達するという段階になった時に爆ぜるとも言われています。大して、2ハゼは二酸化炭素の生成が主体の爆発ではないかとも言われています。

しかし、細胞のレベルで見れば、この間の変化は連続的なものであることが示唆されます。はっきり2ハゼが起こる前であっても、豆の内部にはすでに真っ黒に近く炭化した物質が集積している場合がしばしばあるようです。また2ハゼのエネルギーもかなりの部分は水蒸気が担っている可能性があります。もし、完全にカラカラの状態になっていたとしたら、いくらなんでも小さな二酸化炭素が抜ける場所がないほど密封性が保たれているとは考えられないからです。

また、2はぜの最中にチップのようなものが飛ぶことが知られています。これらは内部の圧力を調整する第二の弁のように働いているのでしょう。

1ハゼは豆全体が安全弁のない圧力釜の状態で熱せられていたのが爆発して、主に水蒸気を逃す場所を作る作用で、元々安全弁に相当する漏れのある豆は最初からハゼない(あるいはハゼる必要がない)のでしょう。そして、2ハゼはその安全弁でも逃し切れない圧力が溜まった時に、栓となっていたチップを吹き飛ばしたり、豆に亀裂を生じさせたりして逃す働きをしているのでしょう。すでに水蒸気が出る出口があるのに、また小さな二酸化炭素の分子が抜ける場所などいくらでもありそうなのにさらに爆ぜるこの段階ではかなり急速に二酸化炭素なり、水蒸気なりが発生している可能性があります。

常温で液体の水と違い二酸化炭素の場合発生したそばから抜けていきやすい、そして、そもそも安全弁ができていることもあって、大きな音はでないのでしょう。だから、小さな音になる。しかし、豆の内部では急速に反応が進んでいてアツアツのはず。ここまできたら、ほとんどの場合すぐに降ろしてあげる必要があります。

今回、焙煎中は危険ということで、冷却後に調査することを徹底していたのですが、釜から、降ろした後にパチっと爆ぜることがあり、運悪く、潜入中にこの現象が起きて、損傷する事故があり、次回の調査には少し時間がかかる見込みです。

まさに、ミクロの決死隊。もとい、ミクロイドSでした。