The Coffee Roaster House

just around five pounds retreat

北欧諸国のコーヒー事情と日本

小国ゆえの特殊事情でたまたま統計上の消費量が実際より高くカウントされるルクセンブルクを除くと、世界でもっとも一人当たりのコーヒー消費量が多い国の上位は、すべて北欧諸国で占められています。

その筆頭はいうまでもなく、フィンランド。日本の3〜4倍の消費量です。一年で12キロを超えているようですから、10gで1杯と計算しても1200杯。赤ちゃんまで入れた全国民の数で割っても毎日3、4杯のコーヒーを飲んでいることになります。

そして北欧の中でも一番の親日国はフィンランド、何と言っても、長年、ロシヤ(旧ソビエト連邦)の影響力の下、辛酸を舐めてきたので、日本といったら、遠く離れた東洋の国というより、島国ながら、一度は宿敵を懲らしめてくれた国として、少なからず親近感を持ってくれているようです。そのほかにも、民族的に、歴史的な背景もあって、ヨーロッパの国の中でも一味違った価値観を持っています。(日本の世界史でも習うことですので、詳細は割愛。)

その北欧諸国、昭和世代の自分にとって、かつては、一年中寒い気候に耐えるために、ただの深煎りのコーヒーをたくさん飲む国として、紹介されていた記憶しかなかったのですが。

いまでは新しい福祉の概念など、21世紀にふさわしい新しい社会のあり方を提案することに熱心な近年の北欧の国らしく、コーヒーの世界でも先進的な発想が生まれてきています。

なにしろ、企業が従業員のためにコーヒーとお茶菓子を用意して、振る舞うのが義務化されているのです。どうもコーヒー休憩の時間も勤務時間の一部としてカウントされるようです。(生きること=コーヒーを飲むこととでもいわんばかり)

それで、仕事をしていれば、1日に10杯近く、コーヒーを飲むのも珍しくないそうです。スペシャルティの本格的なコーヒーをこんなに飲むと日本ではうっかり破産しかねないですが、なにしろ、無料。ただです。オール・フリー!

こんなに飲むと、たくさん砂糖を入れたり、チョコレートを混ぜたり、アレンジしても、限界がきて、却って体が受け付けなくなりそうですし、そもそも仕事場で大勢の人とシェアするには向きませんよね

。つまり、なるべくプレーンで、しかも毎日のことですから、素材の良さ、コーヒーとしての質が求められる。

さらにコーヒーらしくないと思えるような、ちょっと変わったコーヒーも含めて、飲みたいと思うのも無理はないし、体の負担を減らしつつ、美味しく飲むために、可能な限り浅煎りになり、また流通が発達して、産地から直接いい条件で輸入できるようになれば、高品質なコーヒーの個性が際立つスペシャリティの焙煎が求められるのはごくごく自然なことかと思います。

ヨーロッパの中では、産地から距離的には離れているはずの北欧でスペシャルティが盛んなのはこのような背景があるんですねえ。

産地が遠いハンデを抱えてきたという意味では日本とも共通点があると思います。

 違うのは、日本の場合、気候の違いと、自動販売機やコンビニの影響で、コーヒーだけでなくたくさんの種類の清涼飲料水が飲まれていること。

コーヒー以外に紅茶や緑茶、麦茶などを嗜む習慣があること。

それと水道の水質が比較的良好で特に夏場はそのままお冷で済ますこともできる点です。

いずれにしても、「お茶すること」に対する選択肢の広さを考慮すると、日本の広義の「お茶する」文化も捨てたものではないと思いますし、その中の日本ならでわのコーヒーの歴史について、もっと胸を張ってもいいと思っています。

なにせフィンランドの人口は551万人。福岡県と大分県の人口を足して少し引いたくらいの人口です。いくら一人当たりの消費量が4倍で、高品質のコーヒーをたくさん消費しているといっても、1億2000万人と20倍以上の人口を有する日本が敵わないとは思いません。