自分が小学生に上がる少しまえまで、母方の実家では田植えもほとんど手作業で家族総出でやっておりましたので、自分も少しお手伝いした記憶があります。
実はおじは地方の農協でそれなりに出世した方だったので、当時としては最先端に近い田植え機を導入したのも、収穫後の乾燥機を導入したのも、地域ではほとんど一番でした。
ちなみにその頃、農家では、収穫後の稲はいわゆるはざ掛けをしてから、脱穀するのが当たり前でした。
途中、雨に当たりすぎると品質が大きく劣化してしまう。かといって、乾燥のことだけ考えて収穫の時期をずらすとうまくいかない。
通常、ベストのタイミングで収穫した籾には玄米にすると、青い小さな粒が1割弱ぐらい混じってしまいます。この未熟に見える稲がむしろ、特に新米のういういしい香りを引き立てるようにも思えるのですが、全体が熟し過ぎてしまうと、おいしさが失われてしまうのは、コーヒー豆の収穫のタイミングにも通じるところがあると思います。(今では産地から直接購入しても、この青い粒は取り除いて出荷するところが大半のようです、都会の消費者のクレームの力に負けたんだと思います)
ところで、天日干し、と機械乾燥の差ですが、当時から議論になっていたのは、やはり天日干しの一部の劣化したものを除けば、機械乾燥でははるかに及ばないおいしさがあるから、絶対天日干しでないと、という意見が昭和40年代の中頃過ぎは優勢だったかと思います。当時出始めたばかりの乾燥機自体が相当高価な上に、故障も珍しくなくて、途中でこけたり、高額な修理代になくことが珍しくなかったようですから。
それでも、やはり安定した品質と労力の少なさであっという間に機械乾燥が主流になりました。
今では天日を謳うものも形だけ、ちょっとお日様にあてて、あとは機械乾燥という感じの仕上がりのものがほとんどではないかと思うくらい。わざわざ天日干しと謳っている高価なコメをお試しで少量購入してみても、昔のお米の味は味わえなくなりましたので、天日干しの本来の味を覚えておられる方は自分の世代でもごく少数派になっていると思います。
特に玄米で食すと、天日と機械乾燥の差は大きく、何割増かの値段を払ってでもと思うくらいですが、手間やロスを考えると、それでも農家の方にとっては割に合わないのだと思います。
気のせい、と思われるでしょうけれど。
自分の場合、玄米だと無農薬でないと農薬の味を味わっている気分がするのです、で無農薬を指定すると、さらに倍、3倍のお値段に。ここまでいくとさすがに、ちょっと手が出せません。