The Coffee Roaster House

just around five pounds retreat

3キロ 連続17バッチ ③ 焙煎機とかけてスーパー銭湯と解く

焙煎機の中の空気の動きがやっと見えるようになった感覚が少しありまして、やっとこさ頭の中で3DCADが展開するような感覚になってきています。

薄々感じていたことで、この年式の半熱風に限ることとは思いますが、バーナーで発生した熱風はドラムの上側、それも一番上の3割から4割くらいのところを中心に通り抜ける構造になっているようです。

そのカラクリですが、釜の中で一番燃焼室の上あたりが温度が高く焙煎中は常に300度以上、条件によっては部分的には500度前後までの温度になります。その熱風が真っ先にドラムに入り込んでくれるのが直火式の焙煎機です。パンチングにはそれなりに抵抗があり一つ一つの穴がまるでノズルのように作用することで空気に渦を作ります。そのために生豆から出る冷気とうまく混じりあって、ちょうどいい具合の200度前後の温度になって豆をすり抜けて排気に回ってゆきます。直火のメリットはバーナーが直下にあることよりも、むしろこのパンチングに触れる位置に常に高い確率で豆が存在していることが大きいと思われます。たまに火力が高すぎて、火傷しそうな豆があっても、ひんやり200度行くか行かないくらいに冷えているフロントパネルに押し付けられて、体を冷やしながら、焙煎は進みます。この辺はサウナで冷水に入ったりを繰り返すのと同じですね。サウナで体が絞れるので豆もキリッとして出てくると思います。

しかし当方のは半熱風。豆はパンチングから遠く離れた位置にあり、冷たいフロントパネル側に押し付けられたり、熱いドラムの上を転がった後は、焙煎機の真ん中ぐらいまでたまにジャンプして比較的のんびり過ごしています。その間、ほとんどの熱気は素直に焙煎機の側面を伝って焙煎機の上に溜まります。ですから、温度が上昇するのは、焙煎に直接関係しない焙煎機の上側です。ここの温度はだいたい300度台ぐらいで収まることがおおいのですけれど、ダンパーを閉めてしまうと400度前後もしくはそれ以上まで上がることもあると思います。つまり、バーナーで発生したカロリーのかなりの部分は焙煎機の上部の加熱に先に使われて、部屋の空気を温めます。ここだけ見ると富士の焙煎機は暖房機能が高い。夏場は40度平気で超えてきます。

ここから排気を上げると、どうなるか。この上に溜まった熱い空気は比重が軽いので、ほとんど豆に触れずに焙煎機のドラムの上側の面を伝ってそのままストレートに排気ダンパーに向かおうとします。

それがいやでどんなに排気を強めたところで、空気は基本、面にそって動こうとしますし、熱い空気が軽くて上に溜まるのはもう、基本的な物理的法則なので。高い確率で豆が存在しているドラムの前側半分下は避けてすり抜けていきます。一部、バーナーから直接入り込んだ熱風があったとしても、暖かい空気は軽いのでやはり自然に豆の周囲の重たく冷たい空気を避けてそのまま排気に向かいます。

特に焙煎量が少なくなればなるほど、ほとんどの豆はせっかくのサウナ熱風に触れることができないうちにドラムの中を踊ります。つまり例えて言えば、せっかくスーパー銭湯に行ったのに、サウナに入らずにジェット水流を浴びたり、のんびり湯船につかっただけで帰ってきてしまうようなものです。豆はしっかり伸びるかもしれませんけど、直火とは全然違う仕上がりになります。

というかもっとはっきりいえば、じっくり体が温まって汗が噴き出るまで10分から20分しっかりサウナ室に留まっていられる大人の焙煎が直火の豆で、ちょっとだけサウナ室の扉を開けて、あ熱いと思って、きゃあきゃあ言いながら、湯船につかったり、打たせ湯で遊んだりして、しばらくしたら、またパパのところが気になってサウナ室のドアを開けて怒られたりしながらのんびり過ごしているのが半熱風の豆という感覚でしょうか。

豆の周りには内部から発生する水蒸気がバリアのように存在しているのですから、かなり間接的にしか温められない条件で、ゆーっくりドラムの内側が温まってゆく感じになります。この状態だと、ごく例外的に高い位置にはね上げられた豆だけが、サウナ熱風に直接触れて落ちていきますので、ムラの原因にもなりやすい。つまり十人兄弟を連れて銭湯に行ったら、一番上の子だけはサウナで先に茹で上がって、早く上がろうとするけど、他の子は湯船にゆっくりつかったままで出てこない。子供たちが全員出てくるまで外で待っていたら、風邪をひいてしまった、という感じになりやすい。

具体的には一般的に言われている適正焙煎量相当を入れた場合、RORでいうとほとんどの時間6-8がやっととか。15以上は夢のような世界という感じになってしまう。(このあたりの条件はK型熱電対の熱容量(径が太いこと)の影響だけに止まらないようでした。)

どんなにバーナーを増強しても、排気を調整しても、基本的にこの関係は崩れない。

ドラムの回転数を上げたとしても。それはそのまま排気を上げたのと同じでせっせと羽がファンの代わりをして、せっかくの熱風をダンパーの側に送っていまい、豆に触れる熱風の量は増えず、時間が経つにつれ温度は下がります(排気を上げたのとほとんど同じ効果が得られるだけです)。

羽根の影響でドラム内の空気が混じるかというと、ダンパー側に向けて排出されてゆく熱い空気の流れに対して十分ではないようなのです。むしろドラムと周辺の空気だけが切り離された状態のまま回っている感じになりやすい。あの構造は豆の攪拌を主に意識した形状なのでしょう。

このように半熱風の場合は、ドラム内部の冷たい空気と暖かい空気を積極的に混ぜ合わせる場所も仕組みもありません。そもそも後ろのパンチングをすり抜けてくる熱風はバックパネルの過大な熱容量の影響を強く受けて、焙煎の前半は温度は低め、後半は高めになるのですが、これは直火以上に焙煎に直接影響します。(慣れないサウナの熱を冷ましてくれるかと思ったら、あまりに生ぬるかったり逆に過熱させて火傷の原因を作る可能性がありますのでどちらかというと悪影響?蓄熱はしているのに蓄熱性がないと言われる理由の一つがここにあります)

ですからドラムの羽根の部分と一緒に回っている空間、ドラムの蓄熱で温められた空気の力で焙煎できる程度の量(ドラムの羽根の側面にくっついて回れる程度の豆の量+α 推定200-700g以下)で焙煎した方が遥かに安定する傾向にあります。

もっとたくさん焙煎したい場合は、ドラムの上側の熱風を利用できる焙煎量として、2,5-4kg位の量を焙煎した方が断然よくなるわけです。このときは、豆の量の力でドラム内部の空気を直接攪拌しているような感じになります。これくらい入れると、ドラム内の豆の冷気が焙煎機の内側いっぱいに充満した感じから、ブーっと圧力が上がって、陽圧になってゆくのがはっきりわかります。

ということで、実用的にはあまり釜が温まっていない条件だと、焙煎量は200g程度からが無難なところで、ドラム回転数を上げてやると少し焙煎しやすくなる。これは豆が温度センサに当たる確率が上がって温度がみやすくなることも多少ありますが、豆がドラムの高い位置までへばりついて、ドラムの蓄熱を利用できる時間が増えることがおそらく影響しています。(もちろん、いくらかはドラム内部の温度のムラも解消されるでしょう)

そして十分以上に釜が温まっていたり、長時間の焙煎を許容できる場合は2.5kg以上入れて、積極的にドラムの上側のサウナ熱風を有効利用した方が効率が良い。特に連続焙煎で釜が温まりすぎたと感じたら、思い切って4kg位入れたほうが多分煎りやすいと思います。

そのときこそ、排気を本格的に強める意味があります。そういう意味ですと、高い煙突はやはりあった方がいいですね。一長一短ですけれど、あえていえば自然なドラフト効果を利用した方が少しだけ焙煎量の幅も広がると思われます。ファンで強制的に流れを作るよりもいくらかは自然に上手く流れるはずです。ただし、煙突効果は外的要因に左右されやすいのでデメリットもあります。本当はある程度自然なドラフト効果がつけられる環境と可変制御のファンを切り替えたり、組み合わせたりを自在に使い分けられるといいのかもしれません。そういう実験をやろうと最近まで準備していたのですが、どうやら時間切れになりそう。

とにかく、ぎりぎりめいいっぱい入れて、やっと熱風が豆に十分当てられるようになるんですよね。で、そのときは、バーナー増強していた方がやはり余裕があっていいと思います。

ちなみに最近の3キロの場合はちゃんと設計変更されているので、こんなことはありません。