The Coffee Roaster House

just around five pounds retreat

なぜ、焙煎(機)にこだわるのか

ちょっとカフェをやりたいなら、焙煎などは外部に任せて、コーヒー豆は買ってくればいいのです。

どうしても焙煎をしたいなら、有名メーカー品を購入して使いこなせばいいのです。メーカーはそれなりに講習などをしてくれますし、昔のように職人気質のおやじに鍛えられながら、何年も修行するということは必要ではありません。

というか、かなり知られている店でも、学生のアルバイトに焙煎させているところなどもあるようです。

そういう意味では、焙煎は特殊な技術として持てはやすほどのものではなくなっているのかもしれません。

実際に、NOVOという電気式の機械の場合、整備や設置、メンテがきちんとできていれば、どの豆でも同じプロファイルできちんと煎ることができます。こういう機械に最初に投資しさえすれば、なんの苦労もないのです。 (後はショールームと同じ条件を整えらればうまくいくはずです…が…)

では、なぜ、焙煎機をわざわざ作ったりしているか。

実は、今使っている釜、自家焙煎店をされている方からみれば、おもちゃのようにしか思えないものでしょうが、こんなものでも、実はメーカー製の評価の定まったロースターが買えるくらいの金額をつぎ込んでいます。それこそ中古なら、3キロとか5キロでも。

(実際には、こんなものでは治りません。これはあくまでも部品や工具に直接使った代金の合計でしかありません)

こんなことなら、ディスカバリーを新品で買って使い倒した方がよっぽどよかたのに、という気持ちが起きないわけでもないのですが、そうしないのは、理由があります。

自分がよいコーヒーに最低限必要と思っているエッセンス、これが感じられる焙煎に出会う確率は、市販の焙煎機を使う限り、相当低いのではないかと感じることが多かったからです。

例えばディスカバリーにしても、コーヒーとしては一般に受け入れられやすい、商品として一級であるといえそうな焙煎に出会ったこともありますが、ほとんどの場合、自分が求めるものがそこには希薄だったのです。

そうはいっても、自分が求めているものは、でもそんなに特別なものではなくて、たとえばセブンイレブンで購入できるドリップバッグ の中でもかすかに感じることのできるものなのですが、自分が必要とする濃度に達していると感じるものは世の中に多くありません。

ほとんどの自家焙煎店は全滅。ただし、当たれば、地方の準大手クラスの焙煎工場を持っているような会社の商品でも。十分に感じられます。

それと、やはり焙煎の世界チャンピオンの経営されている店とか、やはり相応にヒット率は高いです。ただし、そういうところの商品でさえも、そのエッセンスはあまり長持ちしないのが普通です。

仕方がないので自分で焙煎してみる。それも、普通の焙煎機だと、偶然のように時たまという感じで濃く感じられるそのエッセンスをどうやって安定的、持続的に、それも日持ちのする状態で取り出せるか、

そのことを追求するために、つたない技術で実験を繰り返しているのです。

このエッセンスは、別に自分だけが感じられる特別なものではないと思います。よい、特に新鮮なコーヒー豆で煎れたコーヒーのあの、ふわっとする感じ。その中に含まれている香気というより、麻薬に近いのではないかと思える成分。

それが感じられる焙煎であれば、浅煎りが好きな方に、深めの珈琲をお出しすることになっても、深煎りが好みの方に、浅煎りを出したとしても、好みと一致しないにも関わらず、ほぼ例外なく、いい珈琲であると認めてもらえるのです。珈琲にこだわりがあるとか、ないに関係なく、ほとんど全てのひとに好ましいと思ってもらえるそういういいコーヒーの中心的なエッセンスをどう抽出するか、そこにこだわっているのです。