The Coffee Roaster House

just around five pounds retreat

濃口、薄口、甘口③

自分は東北地方や北海道地方の事情に疎いので、どうしても、関東以南の話中心になってしまいますけど、ご容赦ください。

ところで、コーヒーとは珈琲豆の成分を70倍に薄めた抽出液であること。あるいは希釈液に過ぎないこと。これはとても重要な視点ではないかと思っています。

かなり抽出の条件で変わるとは思いますが、ある資料によると、コーヒーの98.6%は水分ということです。ということはわれわれはコーヒーを飲んでいるつもりでほとんどがその地域の水を飲んでいることになります。

ですから、コーヒーというのは緑茶や紅茶と同じ程度には水分補給の手段でしかないわけです。

ちなみにカロリーは4kcal程度あるようです。紅茶はこの半分くらい。

若干の糖質、脂質、ビタミンその他の水溶性成分、カフェインなどを含みますが、どんなに濃く見えても栄養素の補給としては弱い。

自分のように眠気覚まし的な意図で飲む場合はカフェインをはじめとする成分の補給という目的、および嗜好品としての飲用というのは当然ありますけれど、なんといっても、98−99%は水分。その影響はとてもでないけれど、無視できるもんではないと思います。

つまり、抽出の土台となる水のことを考慮に入れないでコーヒーを論じるのは建物の地盤を無視して、建築物を建てるなり、論じたり。あるいはそれぞれの土地の気候風土を無視して、タネを蒔いたりするのと同じくらい無謀なことではないかと思うわけです。

それはアロマにも及ぶかもしれません。その土地の空気感、実際に大気の成分にも違いがあるとすれば、コーヒーの発する香気にも影響はあるはずです。

特にコーヒーを評価する時、その場所の換気、部屋の大きさ、天井の高さやテーブルの間隔や人の数などまですべて微妙に影響しているはずです。もっともコーヒーのドライのアロマをはじめとして、上等なコーヒーの発するアロマは十分に強力なのであまり意識せずに済んでいるだけだと思います。

ただ、これどうしても言いたいんですけれど、空気清浄機や空調の発達によってかなり今ではかなり改善されているとはいえ、都会の排気ガスにまみれた空気と田舎の大気で評価するコーヒーのアロマがまったく同じはずがありません。

もちろん田舎は田舎で近所の牧場の匂いやら、色々な煙やらただよってくるかもしれないし、結構田んぼ由来の泥臭いメタンガス満載の臭気も強烈なので、必ずしも都会が有利というわけではないんですけれどね。

とにかく、珈琲を純粋に評価するのは本当に難しい。

特に九州のとびきりいい環境でコーヒーを評価する時、下手すると、スペシャルティらしくない丸みのある深い焙煎が特に一般の人に評価されやすかったりするのも。

また都会で評価の高い焙煎が妙にとんがって感じられたり、また時に逆の場合もあるのも、抽出の技術や味覚の未熟さゆえとは限らず。

単に水や空気の差で説明できることの方が多いように思います。

単純に水や空気が良過ぎて、雑味成分やら尖った成分が目立ちやすかったり。

それが目立たない中庸な焙煎が好まれたりといったことがありえるわけです。

飲食全般に言えることかと思いますが、コーヒーに限らず。飲料の文化というのはその地域の水、空気、その他風土全てに影響されるものだと思います。