The Coffee Roaster House

just around five pounds retreat

濃口、薄口、甘口①

一般に関東の醤油は濃口(九州人の感覚だとなんでもまっくろけ)、対照的に関西の醤油は薄口とされます。といっても関西であっても、あるいは九州であっても、保存性を確保するためにそれなりに塩分は必要なので、見かけは淡く見えても実際にはそれなりに塩味は効いていますし、またこちらからいくと、蕎麦つゆなどびっくりするくらい真っ黒けではありますが、関東の醤油もみかけほど塩分が濃いわけでもありません。

ただし、やっぱりというか、こちら(九州)を基準にすると関東は醤油に頼った味付けに感じますし、なんでもかんでも甘辛いというか醤油辛い。

外国の人が羽田や成田に着くと、醤油の香りがして、ああ、日本についたなと実感するというのもうなづける気がするのです。

自分が関東に住んでいた時分は野田の醤油の産地が近いし、昔から裕福だから贅沢に醤油が使えたからなのだろうかと思っていました。

そもそも関東と関西、出汁の取り方から違います。これは一応、定説としては少し硬めの水の関東と軟水傾向の強い関西の水の違いとして説明されることが多い。

たとえば、関東の水は硬水で昆布などでは味がでないから、鰹節をたっぷり使った出汁をよく使い、尚且つ、バランスを取る意味で醤油も濃くしている。

関西では軟水でごく微妙な出汁が取りやすいから、その出汁の繊細な味を壊さないように薄めの醤油が好まれると。

これ、いかにも上方の文化を上位にみるようなものの見方ではありますが、実際、京都をはじめとして関西の方が都としての歴史は古くそれなりの食文化の蓄積があるので、仕方がないところもあります。

そういう文脈ですと、九州はもっと水も豊かで澄んでいて、なおかつ急流を下って降りる分、軟水の傾向は強いと思います。そうなると、あまり尖った成分があるとすごく目立つ、いろいろな雑味も出やすい分、全体が丸くまとまる旨みや甘みが主体であることがより重要となります。

こういった面から、九州の甘口傾向も一応は説明がつきます。
なんといっても、農産物も海産物もより新鮮なので素材の味を活かす意味では余計な味付けはない方がよく、あえていえば全体を包むようなまろやかさや甘みがあった方がいい。どうしても天然由来のある種のアクや渋みは残るわけですから、それをカバーできる甘み主体の味付けが方が好ましいとなるわけです