The Coffee Roaster House

just around five pounds retreat

コーヒーの原料としての豆 Part II

次に4以下について1つずつみていきます。

まず、4のシルバースキン。
商社によっては綺麗に磨いてくださるところもありますので、特に手網で焙煎する場合など影響するのはもちろん、無視できない可能性があります。一部の方は水で洗ったり、余熱前の焙煎機にかけて落としたりといったことをされておられるくらいです。ただし、豆が乾燥し始めると、ほとんどが途中でチャフとなって剥がれ落ちてゆくので、焙煎の本番とも言えるステージでの影響は比較的軽微と思われます。あえていえば、前半、断熱材のように作用して熱が伝わりにくくなるかもしれないくらいではないでしょうか。無視できないとするなら、大雑把に外観として3に含めて、考慮に入れる程度で十分でしょう。

次に5の豆の色です。
これは特に赤外線の吸収度合いに影響するはずなので、直火の場合は多少影響するでしょう。ただし、その度合いはごくわずかではないでしょうか。焙煎の熱の伝わり方のうち、赤外線に頼る部分は小さくはないものの、一部を反射したり、透過したところで、結局周囲を温めて豆に熱が伝わる形になります。豆が白かろうが、黄色であろうが、緑であろうが、赤外線の吸収率に関して言えば、黒や茶色との比較で大した差ではなく、後半、色づいた後は関係無くなります。

6は産地の標高です。
これは具体的には産地の気候の条件でしかありません。また標高の高さ自体は同じ産地の中で比較しないと意味がありません。この数字は具体的には豆の密度に影響してくる指標と捉えてほぼ差し支えない。むしろ、そのようにシンプルに捉えないと、泥沼にはまりかねないところです。ということで今回は2に含まれるものとして扱います。

7はテロワールです。
こちらも赤土ならばどう、黒土ならばこう、といった明確な差異が生じる可能性は確かにあるかと思います。また日照が〇〇時間以上だと、こう、といった具合です。ただし、ここを追求しようとすると、世界各国の産地に出向いて検証しなくてはならないレベルに入りかねないところで、状況さえ許せば、ぜひともやってみたいところですが、そもそも物理的にカロリーとの関連をみるというテーマからは相当、脱線してしまいますので、今回は考慮外とします。

8の精製方法は豆の仕上がりのフレーバーに関して、大きな差異を生じるものです。同じ水分量に収まっていても、ナチュラルと、パルプドナチュラルがまったく同じではありえない。

しかしながら、純粋に焙煎の工程としてみたとき、同じ地域の同じ品種のほぼ同じサイズの豆で、水分量に差異がなければ、精製方法が変わっても、焙煎中のプロセスとその結果にはそれなりの連続性が感じられることが多いです。カロリーを伝えることで焙煎するというシンプルな切り口の中では水分量の違い以外の部分をあえて論ずる必要性は特別にはないと思われます。ただし、そのフレーバーの違いについては後ほど触れたいと思います。

9の輸送と保管は、コーヒーの仕上がりに対する影響はある意味最大級です。主要な産地から遠い日本にとっては特に。ただし、これも乾燥の度合いとしてシンプルに扱うべきでしょう。少なくともカロリーという視点で切り取る際はこれ以上のことを追求するべきではないと考えます。したがって、これも1に吸収されるものとします。

10の品種の違いについては、本来、究極の焙煎においては、もっとも追求されるべきことのひとつと思います。とはいえ、産地の生産者の申告する品種の情報はかなり曖昧か、いい加減だったりしますし、畑の中で混ざったり、交雑したり、本来、コーヒーの木はもともと変異の多い植物でもあり、泥沼化必死です。いつかは遺伝子工学の力で、新しい見方ができるようになるかもしれませんが、今回は、3の大きさと形状(外観)に含まれる要素として扱うのが相応かと思います。

11の栽培技術は10以上に重要となる可能性がありますが、これも突き詰めれば世界の産地を詳細に調べる必要が生じますので、結果として現れる豆の物理的性質に的を絞って、1〜3に集約されるとみる以外に、現状では方法がないと思われます。いつかはAIの発達により、膨大なビッグデータの中から、何らかの関連性が見つかり、コーヒーの謎が解明されるかもしれないものの、しばらくは未知のままでありつづけるでしょう。

ということで上位の3つに絞ることになりました。水分、密度、外観(サイズ、形状およびシルバースキンの有無等)です。